流れで確認しておきたい土地売却(買取)の契約・手続きの方法
土地売却の流れは、大きく分けると以下の4段階となります。
(2)売却相手を決定する
(3)売買契約を締結する
(4)代金を受領し、権利を移転させる
それぞれの詳細については、以下の通りです。
※本サイトの土地売却は所有権を対象としています。地上権や賃借権の取引でも売却の流れは大きくは変わりませんが、詳細については異なる箇所があります。予めご了承ください。また、実際の多くの場合と同様に、本サイトでは土地売却の流れで、宅地建物取引業者(いわゆる「不動産屋さん」のことです。)を利用することを前提としています。
(1)売却価格を決定する
「私の土地は一体いくらで売れるのだろうか?」
これは、本ホームページをご覧の土地売却に関心をお持ちの皆様にとって、最も高い関心事のひとつではないでしょうか。
売却相場や売却価格を調べるには、今では以前と異なり自身でインターネットで調べる方法もあります。しかし、ここでは宅地建物取引業者に売却査定を依頼することを前提として進めていきます。
ここで、皆様を悩ます問題が発生します。
「一体どの宅地建物取引業者に売却査定を依頼したらよいのだろうか?」
宅地建物取引業者に土地売却について相談することは、多くの方にとってハードルが高そうに思われるかもしれません。しかし、実際は大変なことではありません。
無闇に多くの宅地建物取引業者に売却査定を依頼したり、売却相場について意見を求めることは、結局は無駄に多くの時間を割くことになるのでお勧めできるものではありませんが、消極的過ぎるのも良いことではありません。
知り合いや近所の評判を聞いて、地域の宅地建物取引業者に声をかけるのも良いでしょうし、またテレビCMなどで大々的に広告を出している大手に声をかけるのも良いと思います。また、インターネットの土地売却査定サイトの利用を通じて売却査定を依頼するという方法もあります。
「売却査定を依頼すること」は「土地売却のパートナーを決める」手段でもあるのです。後者はとても重要ですが、前者の売却査定の依頼や売却相場の確認は、少し気楽に考えてもよいのではないでしょうか。
(1)において最も重要なことは様々な宅地建物取引業者がおこなった売却査定から、売却価格及び土地売却のパートナーとなる宅地建物取引業者を決定することです。パートナーとなる宅地建物取引業者は、必ずしも一業者でなければならない訳ではありませんが、ここではひとつの宅地建物取引業者を選ぶということで進めていきます。
では、どのような基準で複数ある売却査定を比較検討するべきでしょうか。売却査定の方法は2種類あります。それぞれの種類について考えていきます。
その1:買い取り査定
売却査定を依頼した宅地建物取引業者が土地を買い取ることを前提とした査定です。土地を買い取った宅地建物取引業者は、それをさらに売却したり、建物を建てて販売します。
買い取り査定のメリットは、売却価格が決定することが、(2)の売却相手が決定することとイコールであり、売却の流れがスピーディーであることです。
その代わりにデメリットもあります。結論から書きますと、売却価格が高くないということです。
一概には言えませんが、売却相場の約50~60%になります。これは、上記の通り買い取った宅地建物取引業者が、再度販売するためのコスト(造成したり、道路を作ったり)を上乗せしても、販売して利益が出るような原価設定にしなければならないためです。
スピーディーかつ確実な売却方法であるというメリットがありますが、売却価格は売却相場の約半分というデメリットもある。これが買い取り査定なのですが、これを比較検討することはそれ程難しくないでしょう。
なぜなら複数の売却査定の中から最も高い売却価格を提示した宅地建物取引業者を選べば良いからです。
土地売却の条件は価格だけではないので、それだけで決めてよいわけではありませんが、価格以外の条件が土地売却において標準的なものであれば、売却査定額が最も高いところを選ぶという基準で問題ないと思います。
その2:通常(土地売却の媒介の為)の売却査定
宅地建物取引業者が行う売却査定の多くはこの査定です。
これは「この土地を不動産市場に流通させた場合、いくらぐらいで売れるかを予測するもの」です。したがって、これを行う宅地建物取引業者には、売却相場についての正確な情報や知識が求められます。
その2の方法は、本ホームページをご覧の皆様も含めて多くの方が勘違いしていることがあります。
それは、ここでも比較検討の基準をその1と同様に、売却査定額の多寡に置いていることです。上記の通り、これは不動産業者が買い取る為の査定ではなく、不動産市場(マーケット)にこの土地を流通させた場合に、市場がどのくらいの値段をつけるか、を宅地建物取引業者が予測するものです。
不動産市場が決める売却価格は、他の多くの商品と同様に需要と供給に基づいて決まります。
売却査定額が高かったとしても、それが不動産市場が決める価格と大きく異なるならば、何ヶ月あるいは何年市場に流通させたとしても、売却相手が見つかることはありません。
そのような査定をしている宅地建物取引業者の能力をどのように判断されるでしょうか。また、そのような宅地建物取引業者は、本ホームページをご覧の皆様の大切な土地を売却を支援するパートナーとして適切でしょうか。
宅地建物取引業者の中にはわずかではありますが、お客様の勘違いを利用して意図的に不動産市場の動向を無視した非現実的な査定額を提示し、土地売却のパートナー(媒介業者)となり、その後しばらくしてから「売却価格を下げましょう」と提案してくるところがあります。
イの査定が予測である以上、誠実に対応したにもかかわらず予測を外すことはあり得ることです。しかし、わずかですがそれを意図的に行う不誠実な宅地建物取引業者がいない訳ではありません。ご注意ください。
では、正しく売却査定額を比較検討するための基準はどのようなものでしょうか。
それは、査定の額そのものではなく、それを出した根拠の説得力です。
宅地建物取引業者が売却査定額を提示したときに、その根拠の説明を求めましょう。
売却査定の方法もいくつか種類がありますが、何らかの根拠をもって査定額を算出している点は共通しています。
根拠とした資料、書面の提示や、口頭による説明などからそれぞれの宅地建物取引業者の力量が見えてきます。
大手などを中心に大変見た目の良い資料や書類を提示するところもありますが、落ち着いて内容そのものに注目するようにしましょう。
仮に一番高い査定額を提示した宅地建物取引業ではなくても、その根拠に最も説得力があり、査定額が正確と思われる宅地建物取引業者がパートナー(媒介業者)としてふさわしいのではないでしょうか。
最後に売却価格を決定します。
査定を依頼した側が考える漠然とした、又は具体的な「売却希望価格」。
宅地建物取引業者が提示した「売却査定額」。
これらに基づいて不動産市場に流通させる売却価格を決定します。
もし、査定額とその根拠に納得できても「売却希望価格」と大きく離れている場合には、つまり想像以上に査定額が低い場合には土地売却を行うかどうかを再検討する必要があるでしょう。
「このくらいの価格で売れればよいと漠然と考えていたが、現実は厳しい。この価格で売却することに意味があるかどうかもう一度考え直してみよう。」ということもあるかもしれません。
尚、売却価格は売却査定額を完全に一致させなければならない訳ではありません。
査定額の前後で売却のパートナーとなった宅地建物取引業と相談して決定しましょう。
(2)売却相手を決定する
(1)-アの買取査定の場合は、買い取る相手が決まっていますので、イの査定を前提として以下の通り説明します。
本ホームページでは、宅地建物取引業者を利用することを前提としていますので、売却相手を探す活動は、主に宅地建物取引業者が担うことになります。
また、最近ではインターネットやブログなどを利用して自ら積極的に売主の立場として広告活動を行う個人の方も増えているようです。
売主は売却を依頼する宅地建物取引業者との間で、媒介契約を取り交わすことになります。
*媒介契約については「土地売却で必須知識の「媒介契約」「売買契約」はどんな契約?」で詳しくまとめているので、ご参照ください。
媒介契約を結ぶと、パートナーである宅地建物取引業者は、売却相手を見つける活動を行います。
媒介契約の種類によっては、前述の売主が自ら広告をすることができない場合もあります。ご注意ください。
最近では、ほとんどの宅地建物取引業者が、インターネットを利用した広告を行っていますし、ネット広告が主流となっています。(ネット広告の一部と言ってよいかもしれませんが、SNSの活用など新たな売却の方法も生まれています。)
また、以前からある雑誌や折り込み広告などの紙媒体での広告も行われています。
プロである宅地建物取引業者に完全に任せても良いのですが、もし時間がありましたらどのように広告されているかネットや折り込み広告を見てみましょう。
宅地建物取引業者には、紙媒体であってもインターネットであっても広告に掲載しなければならない内容が法律で定められています。
「買うことを検討している人に重大な影響を与えそうなこと」は特に重要です。
このことを掲載しない不動産広告は、パートナーの宅地建物取引業者にペナルティが課されてしまう場合があります。
広告を出す際には、宅地建物取引業者は土地の特徴を調べますが、これには協力しましょう。特に持ち主だからこそ知っている情報は、良いところだけでなく、良くないところも積極的に伝えましょう。
土地売却は、売却査定額が正確なものであってもタイミングや運の要素も関係しています。
広告などで情報をオープンした直後に売却相手が決まる場合もありますし、反対に時間がかかってしますこともあります。
ご自身で広告をチェックする際には、他の同じような物件の条件も見るようにしましょう。
売却価格を含む条件が他の物件と比べても不当なものでないならば、あせることなく機会が訪れるのを待ちましょう。
さて、(1)で慎重に選んだはずの宅地建物取引業者に中には、わずかではありますが、この段階で不誠実な対応を取るものがいます。
本来であれば、少しでも売却の機会を広げるためにエンドユーザー向けだけではなく、他の宅地建物取引業者に対しても積極的に情報を公開します。
(他の宅地建物取引業者を通じて、購入希望者を見つける為に。)
しかし、売買契約が成立した場合に仲介した宅地建物取引業者が得る報酬(仲介手数料)を売主からだけではなく買主からも得る為に、他の宅地建物取引業者に対しては情報を公開せず、自らのみで購入希望者を探そうとする宅地建物取引業者がわずかではありますがいます。
これは自らの利益の為に売却相手が決まる機会を狭める行為であり、依頼者に対する誠実な態度と言えません。
ほとんどの宅地建物取引業者は、依頼者の為に売却相手を一生懸命探しています。
本ホームページをご覧に皆様には、このような不誠実な宅地建物取引業者がほんのわずかですがいるということを知っていただければと思います。
購入希望者が現れると、宅地建物取引業者はその方に「買付証明書」という書類に記入させます。
「買付証明書」は民法の「申し込み」に当たります。つまり「これください」ということです。
通常「買付証明書」には購入希望者の氏名と住所、土地の所在地や面積等が記載されています。
そして、「買付証明書」にとって一番重要な価格も書いてあります。
この価格が、売却価格と同じであれば、売主が「この価格で売りたい」と思っている土地を「買いたい」と言ってきた人が現れたわけですから、これを受け入れるでしょう。
これを民法では「承諾」と言います。
民法では、「申し込み」に対して「承諾」すると「契約」が成立しますが、これについては後で説明します。
では、書いてある価格が売却価格と異なる場合は、どうなるでしょうか。
通常は、売却価格より低い数字が書いてあります。
「指値(さしね)」と呼ばれています。
これは「この金額に値下げしてくれたら買います」という意思表示です。
これに対して売主は、3種類の対応を取ることができます。
その1:断る。つまりその金額では売らないという意思表示です。
その2:
受け入れる。これによって、値下げした金額での「申し込み」に対して「承諾」したことになります。
その3:
「そこまで値引きできませんが、このくらい値引きでどうですか」という旨を購入希望者に申し出る。これは売主からの新たな「申し込み」となり、この条件を購入希望者が「承諾」すると、次の契約に進むことになります。
(3)売買契約を締結する
(2)を経て売却相手、及び売却価格が決まると、次は売買契約を締結することになります。
契約締結に際しての注意事項は後ほど詳しく説明します。
契約を締結すると「契約書」という書類が残り、買主と売主双方に権利と義務が発生します。
契約は法律行為ですので、契約に違反するとそれに対するペナルティが課せられます。
契約書を作成したり、契約締結の段取りを組むのはパートナーの宅地建物取引業者に任せます。
(2)で、まだ伝えていない情報がありましたら契約締結前であっても積極的に伝えましょう。
新たに伝えた情報よって、仮に契約締結をしないことになってしまうとしても、また新たに売却相手を見つければよいのであって、契約締結後に「実はこの土地には、このような良くない性質があります」ということが発覚したことで発生するペナルティと比較すればたいしたことではありません。
契約は、原則として宅地建物取引業者の事務所で行うことになります。
例外的に、売主や買主が希望すれば売主又は買主の住所あるいは所在地で行うことができます。
(4)代金を受領し、権利(所有権)を移転させる
民法では通常契約が成立した時点で、契約の対象物の所有権は買主に移転します。
しかし多くの土地売却の契約書には、「土地の所有権は、代金の全額受領と同時に買主に移転する」旨が書いてあります。
これは土地売却では、支払われる代金が多い為に売買契約の締結と代金の支払いが別の日程となっていることが多いからです。
土地売却の売主は、(3)で契約を締結した後、最後の手続きとして代金の受領と所有権の引渡しを行います。
その為の段取りはパートナーである宅地建物取引業者が行いますので、任せましょう。
多くの場合は、銀行で平日に行われます。予め休暇を取っておくなどの対応が必要な方もいらっしゃるかと思います。
銀行で売主は買主から売買代金を受領し、そしてこれも宅地建物取引業者が段取りした司法書士に土地の権利証を渡し、所有権移転登記の為の必要書類に書面と捺印します。
必要書類を受け取った司法書士は、その後売却する土地を管轄する登記所(法務局)に行き、所有権移転の手続きを行います。
これで、土地売却の全ての手続きが完了します。
【執筆協力】
茅原真澄
・かやはら行政書士事務所
・ハウスアンドロー
代表
■保有資格
宅地建物取引士
行政書士
賃貸不動産経営管理士
日商簿記2級
フォークリフト技能講習修了