手続きは司法書士に頼む?土地売却に関わる書類の疑問に答えます
土地売却に必要な書類は、本ホームページをご覧の皆様を含む多くの方にとって日常的に使用しないものもある為、書類の名称を聞いてもそれがどんな書類なのか、どこにあるのか分からないところもあるかもしれません。
ですが、一部は土地売却のパートナーである宅地建物取引業者が用意してくれますのでご安心ください。
ここでは、書類の名称やそれが土地売却でどのような役割を果たすのか、どこで取得できるのか等、及びそれらに関連する手続きについて説明します。
(ア)いわゆる「権利証」
テレビドラマなどでよく見かける不動産の所有権に関するとても大切な書類です。
「権利証」は通称であり、正しくは「登記済証」、2005年3月7日以降は「登記識別情報」という名称になっています。
「登記済証」には、『登記済』という赤い大きな印が押してあります。
「登記識別情報」は、緑色のA4サイズの紙で、下の方にシールが貼ってあります。
このシールは絶対にはがさないでください。
「権利証」は、現在の所有者が所有権を取得した時に、おそらく「大切な書類だから」と保管して、そのままになっているのではないでしょうか。
どこにあるか覚えている方はいつでも取り出せるように準備していただき、どこにあるか記憶が定かでない方は探し始めてください。
いずれにせよ「権利証」は売主が用意しなければなりません。
「権利証」は、売買代金の受領と所有権移転の時の必要書類です。土地売却の手続きでは最終盤になりますが、遅くともその時までに準備をしておいてください。
「権利証」は、所有権移転手続きを行う司法書士に渡します。
所有権移転手続きが終了すると、その「権利証」は何の権利もないただの紙になります。
記念として取っておいてもよいですし、司法書士にお願いして処分してもらってもよいでしょう。
所有権移転手続きを行う司法書士の段取りは、パートナーの宅地建物取引業者が行います。
「権利証」は一度紛失してしまうと再発行されません。
紛失しても土地の売却はできますが、売主に費用の負担が発生します。
紛失してしまった場合は、早めにパートナーの宅地建物取引業者に伝えてください。
(イ)固定資産税の評価証明書
これは、売却する土地のある市区町村役場の固定資産税を担当している部署で取得することができます。
評価証明書の申請ができるのは所有者ですが、委任状を書いてパートナーの宅地建物取引業者に委任して取得してもらうこともできます。
これも、土地売却の手続き上の最終版である売買代金の受領と所有権移転の時の必要書類です。
これには、固定資産税額を決めるための評価額が記載されているのですが、その額を基準にして、買主が所有権移転の為に国に支払う税金の額か決まります。
(ウ)登記事項証明書
以前は、「登記簿謄本」と呼ばれていました。
売却する土地のある市区町村を管轄する登記所(法務局)で取得することができます。
これには、土地の所在地や地目、面積、所有者やその他の権利などが記載されています。
申請すれば誰でも取得することができ、土地について調べたり売買契約書の添付資料とする等パートナーの宅地建物取引業者にとっても必要な書類の為、売主が依頼しなくても取得していることがほとんどです。
ただし、土地売却を考え始めた時に一度ご自身で確認してみても良いと思います。
所有者の氏名や住所が実際のそれと一致しているかどうか。
抵当権を含む所有権以外の権利が設定されているかどうか。
登記事項証明書に記載されている内容によっては、土地売却の手続きに関係する売主が負担する費用や手間が異なる場合があります。
例えば、
(例1)所有者の住所が異なる。
登記上の住所と現在の住所が異なる場合は、所有権移転の前、又はそれと同時に住所変更の手続きが必要になります。
司法書士に依頼することになりますが、その費用を負担することになります。
また、住所変更手続きに必要な書類は住民票、又は戸籍の附表です。
(例2)住宅ローンなどの銀行の抵当権が登記されている。
これも所有権移転の前、又はそれと同時に抵当権抹消の手続きが必要になり、その為の費用の負担が発生します。
手続きは司法書士に依頼することになります。
抵当権の抹消手続きには抵当権者(住宅ローンの場合は銀行)の協力が必要になります。
パートナーの宅地建物取引業者が決定すれば必要な調査や段取りを組んでくれますが、土地売却を検討し始めた段階で、一度銀行に確認してもよいでしょう。
(例3)所有権が亡親、又は亡祖父母の名義になっている
相続手続きを行わないままになっています。このままでは所有権を買主に移転させることができません。
このような場合には、土地売却のための活動を行う前に相続手続きを済ませた方がよいでしょう。
土地売却を行いながら相続手続きを行うことができない訳ではありませんが、いつ所有権を移転させることができるか明確にできません。
「いつ引渡しできるか分かりません」という売り物は、土地に限らず市場に流通させる商品として不利な立場に置かれざるを得ないでしょう。
相続手続きには費用と時間を負担しなければなりません。
相続発生から長期間にわたって相続手続きが放置されていたのですから、相続人全員の協議がスムーズに進まない可能性も十分に考えられます。
場合によっては土地の売却が中止、又は延期される場合もあるでしょう。
(例4)その他第三者の権利
所有者の所有権以外の権利が設定されている場合、土地売却に影響する場合があります。
パートナーの宅地建物取引業者が決定したら、早めにそのことを伝え対策を考えてもらったり、費用が掛かる場合はその見積もりを取ってもらいましょう。
(エ)固定資産税・都市計画税の納税通知書
売却する土地のある市区町村からその年の1月1日の所有者宛てに、5月のゴールデンウイークの頃に送られてくる書類です。
1年間の固定資産税額と都市計画税額が掲載されている部分をコピーして、パートナーの宅地建物取引業者に渡してください。
土地売却の手続きでは、固定資産税と都市計画税の精算を行います。
1月1日から土地の所有権移転の日の前の日までの分を売主が負担し、それ以降から12月31日までの分を買主が負担します。
所有権移転の日が1月~5月のまだ売主の下に納税通知書が届いていない場合には、当事者の合意の下、昨年の納税額で日割り計算して精算します。
精算金は、買主から売主に渡し、その年の市区町村への納税は売主が行います。
翌年からは買主の下に納税通知書が届きますので固定資産税・都市計画税を納めてください。
(オ)印鑑証明書
所有権を買主に移転させる手続きに必要です。
発行日から3ヶ月以内の証明書が必要になりますので、売買代金の受領と所有権移転手続きの日程が決まりましたら、市役所で取得してください。
最近はマイナンバーカードがあればコンビニでも取得できるようです。
印鑑証明書は所有権移転登記の書類の添付書類になります。従ってその書類に押す印鑑は実印です。
尚、土地売却の契約書は実印である必要はありません。
必要書類ということではありませんが、売却する土地が売買で取得した物であれば、その時の売買契約書や重要事項説明書、その他の添付書類を準備しておきましょう。
そしてパートナーとなる宅地建物取引業者が決定したら渡しましょう。
宅地建物取引業者は自ら土地の調査を行いますが、以前の売買契約書等の資料があれば調査の参考になります。
【執筆協力】
茅原真澄
・かやはら行政書士事務所
・ハウスアンドロー
代表
■保有資格
宅地建物取引士
行政書士
賃貸不動産経営管理士
日商簿記2級
フォークリフト技能講習修了