仲介手数料だけではない、不動産売却で生じるさまざまな費用
不動産売却では物件を売り出してから売却が完了するまでに、さまざまな費用が発生します。不動産会社に払うものや国や自治体に納めるもの、司法書士など各種士業に支払うものまで相手も金額も多様で、ひとりで把握するには無理があります。
もちろん仲介業者や司法書士に依頼できるので自分だけで手続きすべきものは限られていますが、不動産売却で発生するかもしれない費用の一覧や目安、確定申告まで幅広く紹介していきたいと思います。
不動産売却で生じる費用一覧
まずは不動産売却でかかる費用の名目と、それがどういった費用なのかを紹介していきます。(ここに記載されているものが全てではありませんので、ご注意ください。)
仲介手数料
仲介手数料は不動産会社に対して支払う手数料です。不動産売却では仲介業者が買い手をみつけてきて売買契約が成立したときに成功報酬として支払うものなので、原則として売買が成立しなければかからない費用になります。
譲渡所得税
譲渡所得は不動産売買によって自分が手にした所得のことをいいます。算出には「売却額」から「購入額」を引き、さらに「購入や売却に要した費用」を差し引きます。法律や条例などで決められた所得控除の適用要件を満たしていればこれも踏まえて額を決定します。この譲渡所得に一定の税率をかけ合わせることで税額が決まります。(税率は5年を超える長期所有で20%、5年以下の短期所有で39%と異なり、長く保有すると税制で優遇されます。)
印紙税
印紙税は課税文書(ここでは売買契約書)に対して課せられることが印紙税法で決められています。契約書に書かれた金額により税額は決まり、印紙を貼って、消印されることで納税が完了します。
登記費用
一例として、不動産に抵当権が設定されているとき、不動産売却のタイミングで抵当権を抹消する登記を行うことになります。この時、不動産ごとに登録免許税がかかることになります。法務局に行き自身で手続きを行うことも可能なようですが、内容が複雑なので司法書士に依頼することが多い手続きなります。
他にも不動産売却には登記がいくつかありますので、後ほどまとめてご紹介します。
その他費用
場合によっては、その他にもいくつかの費用があります。
土地の売却時、隣接する土地との境界が定かでないときには測量が必要になるため測量費が発生します。また、建物の解体や廃棄物の処理、クリーニングがあれば費用が発生し、他にも引越しが伴うならそれに関する費用も考えておく必要があります。
諸費用計算書
自分の不動産売却でかかる費用が気になったら、WEBサイトに諸費用計算書という計算用のフォーマットあが用意されていることがあるため、ここに記入することでおおよその金額を算出することができます。
売却額を記入する時は、不動産価格の査定はばらつきが出やすいので一括査定サイトなどで正確な査定額を知る必要がありますが、諸費用については参考になるので、活用してみてもいいかもしれません。
不動産売却で不動産会社に支払う仲介手数料
不動産売却の費用で大きなウエイトを占めるのが不動産会社への仲介手数料です。金額の上限が宅地建物取引業法で定められているので、ご紹介しておきます。
200万円以下の部分 | 売却金額の5% |
200万円超400万円以下の部分 | 売却金額の4% |
400万円超の部分 | 売却金額の3% |
(いずれも税抜です)
また、この計算を簡略化するための速算式が用意されています。
なぜ6万円かというと、全て3%で計算すると、200万円以下の部分の2%と200万~400万円(=200万円)の1%が計算から漏れているので、4万+2万で6万円を調整額として加算しています。
以上が仲介業者へ支払う仲介手数料ですが、この金額は全て上限となっています。しかしほとんどのケースで上限いっぱいの金額が支払われることになるので注意が必要です。これについては不動産会社への仲介手数料=成功報酬ということもあるので、真剣に買い手を探してもらうためにも仕方ないことだと言えます。
不動産売却の仲介手数料を調べていくと、「手数料無料」をうたったネット広告などを見かけるかもしれません。不動産会社によって事情が違うため一概にいうことは難しいですが、売り手・買い手ともに見つける両手仲介をしている会社などでは買い主の手数料を無料もしくは半額などにして、すばやく売買をまとめたいなどといった思惑を伺い知ることができます。いずれにしても売り手本位ではなく、不動産会社の都合で実施されていることが多く、手数料無料に飛びついてしまうと損をしてしまうかもしれませんので注意深くみるといいでしょう。
不動産売却で売り主が負担する登記費用
不動産売却で売り主が負担する登記費用の名目は「登録免許税」「司法書士報酬」になります。具体的には、以下の登記に際して登録免許税が発生するのでご紹介します。
抵当権抹消登記にかかる登録免許税
はじめに触れたように、土地や建物についた抵当権(住宅ローンを組んだときに金融機関が設定したもの、不動産担保)は、不動産の売却に際して外す必要があります。(抵当権をそのままにして売りに出すことは可能なようですが、買い手がそれを気にしない訳はありません。)
登録免許税は「不動産の数×1000円」となっており、土地1筆・建物1棟なら2000円の登録免許税がかかります。抵当権は住宅ローンが完済していても自動的に抹消されるものではないので、気をつけておく必要があります。
司法書士に対する報酬
司法書士報酬については、どこに相談するかによって金額が違います。数千円で頼めるところもありますが、目安として1万円程度が相場だと言われます。
所有権移転登記は買い主の費用
不動産を売却すると所有権が移転します。しかしこの所有権移転登記は売り主ではなく買い主の負担になります。このため売却側にとってはあまり気にならないかもしれませんが、簡単に触れておくと所有権移転時にかかる登記費用は固定資産税のおよそ1000分の20程度になります。
住所・氏名変更登記にかかる登録免許税
不動産売却にかかる費用ではありませんが、登記の住所や氏名に変更がある場合にも変更登記が必要になります。こちらも登録免許税は「不動産の数×1000円」、司法書士は「1万円~」となっているので、必要のある方は確認しておくといいかもしれません。
不動産売却の確定申告で生じる費用
不動産売却で利益をあげると、その利益(譲渡所得)を別途申告する必要があります。
一般のサラリーマンは会社が代わりに所得申告をおこなうため確定申告をするという習慣はないかもしれませんが、譲渡所得の申告は基本的に自分で行うことになります。
確定申告では「1月1日から12月31日までに得た譲渡所得」を、「翌年の2月16日から3月15日までの間で申告、納税の必要があればこの期間に納税する」ことになります。
確定申告については大きな費用がかかることはありませんが、仮に税理士に確定申告を依頼すると、「数万円~30万円ほど」すると言われています。一般会社員にとっては金額が大きいかもしれませんが、不動産売却は動く金額が大きいので、節税相談と合わせて依頼するのも良いかもしれません。
法人の不動産売却における費用の考え方
不動産売却だけではありませんが、法人と個人では収支の計算の仕方が異なります。
個人の場合
1年間で得た所得が「給与所得なのか譲渡所得なのか、または雑所得なのか」など所得の種類に分けて各々を計算しなくてはいけません。かかった費用も別途計算され、それぞれ所得控除・税率なども異なるので、複雑な計算を要します。
法人の場合
法人の場合は、不動産売却の収支も、他に本業があればその収支でもすべて合算して算出します。個人のときのように分けて納税することもなく、一括で法人税として納税することになるので、細かな所得計算のようなものはありません。
また不動産売却日については、通常は個人のときと同じく「不動産引渡日」を基準にしますが、「売買契約締結日」を基準日として会計を行うこともできるので、会社の利益や納税額と照らして判断することができます。
不動産売却で手元に残る金額と費用の目安
ここまで見てきてわかるように、不動産売却における手数料は売却金額によって大きく変わります。
例えば3000万円のマンションなら仲介手数料が3%+6万円でおよそ96万円、5000万円なら156万円となり60万円もの差が生まれます。
ということで具体的な金額で目安について書くのはあまり意味がありません。そのため、費用や手元に残る金額が知りたければ、売却を検討している不動産ごとに金額を計算していかなくてはいけません。
料金シミュレーション
1つ目に使えるのが、WEB上でできるシミュレーションです。売却価格や取得費、(はじめに触れた計算書で出した)おおよその費用、物件保有期間などを入力していくことで、手取り金額を試算することができます。各サイトによってできることは違いますが、あらかじめ控除特例などが計算式に組み込まれているので、手動で計算するよりも効率よく計算ができます。
一括査定サイト
一括査定サイトはそもそも不動産の売却価格を不動産会社に査定してもらうサービスです。このサービスを使えばまずは複数の会社から査定額がもらえるので物件の価値を知ることができます。その後、不動産会社の担当者に相談することができるので、手元に残る金額や費用の目安なども簡単に調べることができます。
ここまで紹介してきた各費用の詳細も、不動産会社を通すことでほとんどすべて解決することができます。自分の物件を得意とする不動産会社とマッチングできるため、一括査定サイトが「費用の目安を知るために最も役立つサービス」かもしれません。