売主はどこまで補償する?売却物件に問題があった時の瑕疵担保責任

不動産売却で売買契約を結ぶ時、瑕疵担保責任に関する取り決めを行うことがあります。これは物件に見えない欠陥があった時のためのものですが、もし自分が売主なら、実際に瑕疵があった時にどれくらい補償しなくてはいけないのか気になることでしょう。

そこで今回は不動産売却における瑕疵担保責任・契約不適合責任(後述します)についてまとめます。いずれも売主が負う責任なので、トラブルを避けるためにもしっかりと把握しておきましょう。

不動産売却の瑕疵担保責任とは?

瑕疵担保責任について確認する前に、まずは法律用語の「瑕疵」について確認します。

瑕疵(かし)とは

キズや欠点のことを瑕疵といい、法律の文脈では予測できないような性質の欠陥のことを指します。通常不動産売却では物件に確認できるキズがある時は事前に確認し、その分を値下げするなどの対応を取ります。

しかし例えば地盤に問題がある時など、買主が気を配っていても気づかない欠陥というのもあります。そういった契約時に気が付かない隠れた欠陥が瑕疵になります。ちなみに、欠陥というのは心理的なものも存在します。わかりやすいところでは事故物件などが該当し、精神的に欠陥を含む場合にも瑕疵と呼ぶので、覚えておくといいかもしれません。

瑕疵担保責任

さて本題の瑕疵担保責任ですが、これは不動産売却で瑕疵があった場合に売主側にある責任のことをいいます。

先程紹介したように瑕疵というのは買主が意識して気付けるものではありません。そこでもし瑕疵があった時、買主を守るために存在する売主の責任が「瑕疵担保責任」になります。

民法での規定

ここで民法の規定について書いていきますが、2020年より改正民法が適用され、これまでの「瑕疵担保責任」に関する定めではなく「契約不適合責任」に関する規定に変わります。これについては後述しますので、まずは現行の瑕疵担保責任を確認しておきましょう。

民法570条では、簡単にみつけられない瑕疵が見つかると買主に対して売主が責任を負うと規定されています。具体的には、シロアリによる食害や雨漏りなどの腐食がみつかった場合などがこれに当たります。

基本的には損害賠償という形をとりますが、契約の目的が達成されない(例えば床下の腐食で安全な生活が送れない)などといった事情があると、契約の解除を行うこともあります。

不動産売却をした時の瑕疵担保責任の期間・範囲

瑕疵担保責任はどのくらいの期間、どれだけの範囲(どんな事象に対して)で適用されるのでしょうか?

瑕疵担保責任の期間

瑕疵担保責任が適用される期間は、原則として、買主が瑕疵を「発見した時点」から「1年間」と決めらており、この期間は売主に損害賠償を請求することができます。

瑕疵担保責任の範囲

瑕疵担保責任をどのような事象に対して負わせるのか、適用範囲を売買契約書に書くことが慣例となっています。

一般的な責任はシロアリによる食害や雨漏り、構造上の欠陥や水回りの設備故障などに及びます。これらの一般的な範囲をあらかじめ決めることで予想外の瑕疵に責任を追わずに済むため、売り手は安心して不動産を売却することができます。

瑕疵担保責任の特約・免責になるケース

瑕疵担保責任が免責になるケースや契約において定めることのできる特約について見ていきましょう。

瑕疵担保責任は任意規定

瑕疵担保責任は買主を保護するための規定ですが、気づくことのできない瑕疵を問われて売買が白紙になってしまったり損害賠償を請求されたりしてしまうと売主側の負担が大きくなります。

そこで瑕疵担保責任については、原則よりも売主に配慮をした形で売買契約書に特約が盛り込まれます。

例えば、「引き渡しから3ヶ月間だけ責任を負う」もしくは「全部免責」などといった内容が一般的です。これによって売主は瑕疵担保責任を軽減することになります。このように売買契約書などによる合意で原則を変えられる規定を「任意規定」と呼んだりもします。

ただし、この契約で免責をおこなっている時でも、売主が瑕疵の存在を知っていた場合には瑕疵担保責任から逃れることはできません。あくまで気づくことのできなかった欠陥が対象なので、注意しましょう。

売主が不動産会社の場合

なお、売主が不動産会社(宅地建物取引業作)の時は、一部を除き買主が不利になる特約をつけることができません。

瑕疵担保責任における損害賠償について

瑕疵担保責任にかかる損害賠償については、いくつかの決まりがあるので紹介しておきます。

請求までの期限「除斥期間」

損害賠償は、瑕疵の存在を知ったときから1年以内に請求しなくてはいけません。これが除斥(じょせき)期間です。

買主が損害賠償の手続きに移るためには、この除斥期間内に売主に瑕疵の内容を明確にして損害賠償請求の旨を表明し、さらに損害額とその根拠も明示して売主の瑕疵担保責任を問わなくてはいけません。

「消滅時効」がある

また瑕疵担保責任を問い損害賠償請求を行う権利には消滅時効があります。請求は権利行使が可能になった日から10年間、瑕疵の存在を知らなかった場合に行うことができます。これ以降は時効によって消滅してしまいますので、ご注意ください。

契約不適合責任

ここまで瑕疵担保責任についてまとめてきましたが、はじめにふれたように、2020年より改正民法が適用され「契約不適合責任」というものが問われるようになります。

契約不適合責任は、文字通り「目的物」が契約に「適合」しているのかどうかを問います。これまでは瑕疵に関する規定だったものの、契約自体の適正が求められるため、買主は一層購入しやすく、売主はより慎重に契約を交わすことになります。

廃棄物処理法その他法令などの規制

最後に物件の瑕疵について、「アスベスト」についても紹介しておきます。

アスベスト問題とは

古くから断熱材などに用いられてきたアスベスト(石綿)が、肺癌などの健康被害をもたらすことが判明し、表面化した問題のことを指しています。

アスベストと担保責任

アスベスト含有土壌、廃棄物については、既出の通り、廃棄物処理法その他法令上の規制の対象になりえます。そうなると買主はアスベストの処理・処分に費用が発生するため、これについて売主に損害賠償請求を行う場合があります。

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